ワークショップ
ワークショップ参加費
- ワークショップは大会参加費とは別に参加費用が必要となります。
- 学生(学部生、大学院生)の皆様の参加も大歓迎です。
- 各ワークショップは先着順となります。
参加区分 | 事前参加費 | 当日参加費 | |
---|---|---|---|
会員 | 正会員 準会員 | 8,000円 | 9,000円 |
学生 | 4,000円 | 5,000円 | |
非会員 | 臨時会員 | 10,000円 | 11,000円 |
学生 | 5,000円 | 6,000円 |
名誉会員の方は大会にご招待します(大会参加費等は無料です)。
事前参加登録申込
ワークショップに参加をご希望の方は参加申込サイトより参加登録をお願いします。
(第44回大会の事前参加登録申込と同じ参加申込サイトとなります)
また、今大会のワークショップは対面での開催のため、定員に空きのあるものに限り、当日参加申込をすることもできます。
第44回大会・ワークショップ事前参加登録期間
2025年 2月28日(金)10時 ~ 2025年 6月30日(月)
事前参加費支払締切日
2025年 6月30日(月)
※ 外部サイトに接続します。
ワークショップ紹介
WS 1
日常臨床におけるトラウマケアの知識と配慮
ートラウマを刺激しない・余計に辛い思いをさせないためにー
浅井 伸彦 先生(一般社団法人国際心理支援協会)
内容紹介
「トラウマ」という言葉を最近よく聞くようになったという方は少なくないのではないでしょうか。
昨今、トラウマについて注目されることがより高まってきました。過去にはベトナム戦争帰還兵のPTSD研究が中心でしたが、最近では自然災害、事故・事件、ハラスメント、いじめ、虐待、DV、性被害など様々な形での注目がなされてきています。
アメリカをはじめ、「トラウマ治療」と呼ばれる技法が多く開発されてきました。有名なものとしては持続エクスポージャー療法(PE)、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)、認知処理療法(CPT)、ソマティック・エクスペリエンシング®などがあります。これらトラウマ治療の「技法」はそれぞれ正規のトレーニングを受けて、継続的に臨床経験の中から組み合わせて使えるようにしていく必要がありますが、経験が少ない場合に悪化させてしまうことも少なくはないため、学んでも使うことを控えてしまうセラピストのことをよく聞きます。ソマティック・エクスペリエンシングなど身体志向のトラウマセラピーで行われることは、フォーカシングやゲシュタルト療法で行われていることと非常に近く、ヒューマニスティック心理学が元になっている部分は多々あります。
実は、これらトラウマ治療の技法の中には共通事項が複数あり、「トラウマ治療」までせずとも「トラウマのことをよく知った上での配慮したケア」が重要なのですが、現在のところ「トラウマインフォームドケア」というセラピスト向けというよりも、かかわるすべての人向けのものしか提唱されておらず手薄ではないかと思われます。すべての人はトラウマを大なり小なり抱えており、我々セラピストはどんな学派・立場であっても、トラウマを悪化させずにパーソンセンタードに相談を受けていく知識と技術が非常に必要と思われます。
以上のことから、ロジャーズの中核3条件をもとにした「パーソンセンタードかつトラウマインフォームド」な面接が行えるように、一緒に学び考えていきませんか?
本ワークショップでは、レクチャー形式の知識教授部分と、ロールプレイやダイアローグを通した実践的な部分に分け、特殊なトラウマの技術を極力使わずに、トラウマインフォームドなPCAのセラピストになれるように、一緒に学び考えていきたいと思います。
講師紹介
浅井 伸彦
一般社団法人国際心理支援協会 代表理事(MEDI心理カウンセリング東京/大阪 代表)、株式会社Cutting edge代表取締役、南浦和つながりクリニック臨床心理士、オープンダイアローグ国際トレーナー、公認心理師、臨床心理士、保育士。専門は、オープンダイアローグ、家族療法、トラウマケア。
主要著書
「はじめての家族療法(浅井伸彦編著,松本健輔著,坂本真佐哉(監修),北大路書房,2021)」
「あたらしい日本の心理療法(池見陽・浅井伸彦編集,遠見書房,2022)」
定員 50名程度
WS参加にあたっての注意事項
大学院生以上であること
WS 2
「私の研究」の作り方
-研究目的の立て方から研究法の選び方まで
白井 祐浩 先生(志學館大学)
内容紹介
本ワークショップは、研究をしたいけど、どんなテーマで研究をしたらいいかわからない、関心があるテーマは決まっているけど、どのように研究を進めていいかわからないという人を対象としたワークショップになります。
心理学の研究、特に臨床心理学における研究は、単に研究としての興味関心だけではなく、実はそのテーマはその研究者自身の臨床観、ひいてはその研究者の「人」としてのテーマや問題意識とつながっているものです。そのため、心理学(臨床心理学)の研究を行うことは研究成果を社会的に還元するという意義だけではなく、研究自体が自身の臨床観の再確認やその人らしい臨床の在り方の確立に寄与するものであり、また、その人自身の成長や生きやすさにつながるものだと、私自身は考えています。そういう意味では、研究と臨床は別個のものではなく、自分の関心のあるテーマに関する研究を行うことは一つのセラピスト訓練であり、自分の臨床力を高めることにつながると考えられます。
とはいえ、臨床家の中には研究に対して苦手意識を持っていて、研究をするのは大事だと思うけど、何を研究したらいいかわからないという方や、やってみたい研究はあるけれどどこから手を付けていいかわからないという方も一定数いるのではないかと思います。
このワークショップでは、①自分の関心・テーマを探す、②研究目的・仮説を設定する、③研究デザインを考える、④テーマに合った研究法を選択するという内容について、講義とワークを通して考えていきたいと思います。まだ研究したい内容がはっきりしない方、すでに研究テーマが決まっている方のいずれも参加は可能です。また、大学院生や臨床家以外の方も、研究をしてみたいと思っている方はぜひご参加ください。
また、もし時間があり、希望する方がおられましたら、具体的な研究の内容について参加者で検討する時間も取れるといいかなと考えています。
ぜひ、みなさんにとって役に立つ「私の研究」を見つけていく時間になればと思います。
講師紹介
白井 祐浩
志學館大学人間関係学部・大学院准教授。これまで、PCAグループやセラピスト・トレーニング(セラピスト・センタード・トレーニング)の研究を行ってきました。今回は、2024年に出版した心理学研究法の本をもとに、研究の仕方についてのワークショップを行います。
主要著書
「自分らしさ」を認めるPCAグループ入門―新しいエンカウンターグループ法―(第10章,第12章,第13章担当),村山正治監修,創元社,2014年
心理臨床の学び方(第7章担当),村山正治監修,井出智博・古川麻衣子編,創元社,2015年
統計嫌いのための心理統計の本-統計のキホンと統計手法の選び方-,創元社,2017年
逆引き!心理学研究法入門-自分の知りたいことから研究手続きを選べるようになる本-,創元社,2024年
定員 30名程度
WS 3
絵本作りプログラム
竹田 一義 先生(一般社団法人いろどりあつめ)
内容紹介
ストーリーを考え、絵を描き、製本して世界で一冊の絵本を作ります。
絵本は描く人の価値観や生き方などが表現されます。過去の思い出や経験など、自分のストーリーを絵本の世界で表現する過程はかけがえのない体験になります。
ワークショップでは自分のストーリーを絵本にする体験をしていただき、完成した絵本は参加者と交換鑑賞を行います。
感想を伝え合うことで自己理解・他者理解を深める体験になることを目指します。
講師紹介
竹田 一義
一般社団法人いろどりあつめ代表理事。生まれつきの心臓病で体が弱かった頃、絵本を読み、絵を描くことが生きがいでした。そんな私はコロナ禍で、後に妻になる理恵と絵本を描き始めます。絵本作りの「心を育む」「人と人との繋がりをつくる」可能性に気づき、これまで大人の絵本教室、任意団体、学びの多様化学校、夜間中学校、府立高校、フリースクールなど様々な場所で絵本作りを伝える活動を行ってきました。
主要著書
「かいねこきぶんIf I Could be a Housecat」 (石田製本株式会社、2023年)
定員 16名
WS参加にあたっての注意事項
WS参加費に加え、材料費(オリジナルの絵本制作キット)を一緒に徴収します。
1人1,540円(税込)になります。
WS 4
竹内敏晴氏の足跡から学ぶ、セラピスト・トレーニングの実際
定行 俊彰 先生(仙台ゲシュタルト&カウンセリング、宮城県公立小中学校)
中井 美彩子 先生(セブンメンタルクリニック、大阪バイオメディカル専門学校)
内容紹介
セラピストが今-ここでのクライエント自身の中起きていることを理解するには二つのチャンネルがあります。一つは「言語による理解」、もう一つは「感覚的な理解」です。今回のワークショップではセラピストの「感覚的な理解」能力を高めていくことを目的としています。
感覚的な理解とは、セラピストが自身のからだの感覚、からだが今何を感じているかに気づき、お互いのからだが共鳴するかのような状態の中で、クライエントに起きていることを理解していくことです。このような関係が成立するとき、共に今-ここに存在し、関係性が深まりを見せていきます。そして、両者の中に変化が生じてきます。
演出家であった竹内敏晴は、演劇のレッスンを通じて「からだ」と「ことば」の関係や人と人が真に出会うということについて真摯に探求を続けた人物でした。上述のような人と人との在り方について竹内は、「主体としてのからだと主体としてのからだが、じかに出会う時、お互いの中が激しく揺さぶられ、変化が起きる関係」であると述べていました。しかしながら、生産性や効率を求めがちな社会においては、からだの感覚をじっくり感じることよりも機能的な説明言語で考えることが重視される傾向があります。このことを竹内は「からだの死を意味する」とまで強く語っています。
セラピスト自身が自分のからだに起きていることに敏感になり、それらを表現し開くことが成り立つならば、クライエント自身も安心し、自由に今-ここの自分の内実を発見し表現する関係性が深いレベルで成り立ちます。
今回のワークショップでは、セラピスト自身のからだが今-ここにおいて何を感じているのかということを丁寧に深く気づいていく定行テイストの竹内レッスンの一部を行っていきます。自分自身や他者を感じること、それをからだとことばで表現してみることの経験を通して、セラピストとしての「感覚的な理解」能力がどのように変化するかを経験し、共有していきたいと考えています。さらに最後にはからだの感覚を重視したセラピーの実際を見ていただき、質疑応答の時間を取りたいと思っています。
講師紹介
定行 俊彰
仙台ゲシュタルト&カウンセリング主宰・宮城県スクールカウンセラー、アメリカ臨床心理学修士、公認心理師、ゲシュタルト療法ファシリテーター。2016年、これまで務めた公立小学校教員を途中退職。「仙台ゲシュタルト&カウンセリング」設立。宮城教育大学にて竹内敏晴氏に出会い、「教師のからだとことば」「ゲシュタルト療法」について学び始める濃密な4年間を過ごしました。ことばが他者のからだに沁み届くこと、からだが今-ここでの場で何を感じているかということ、主体としてのからだとからだがじかに出会うということ。これらが氏のレッスンと講義を通して痛烈に自分のからだに沁み、真の意味で人と人とが出会うとは何かについて学び、現在の心理臨床の現場においてもこれらの探求が続いています。そして、セラピストとクライエントが深く出会う経験が、クライエントの自己成長に深く影響する事例を見てきました。
現在はセラピストとクライエントが深くじかに出会うことで生じるセラピーの質の深まりが自然と生じてくることに注目し、セラピストの身体感覚の解像度をどのように高めていくかという、セラピスト・トレーニングに最大の関心があります。
中井 美彩子
セブンメンタルクリニック、大阪バイオメディカル専門学校。関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻修了。臨床実践を続ける中で身体感覚を養うことの重要性に問題意識が高まっていき、現在は定行俊彰氏らとともに竹内敏晴の勉強会の運営スタッフとして携わり、学びを深めているところです。職場ではトラウマ臨床が主な実践となっており、PCAを土台としたトラウマセラピーの在り方や、トラウマセラピーにおける身体感覚の扱いなど、自分なりの臨床観やスキルを磨くべく目下奮闘中です。
また、「セラピスト・トレーニング」については、大学院を出てから今日に至るまでずっと関心事として私の中に強くあり、自己研鑽を目的とした体験合宿を行い、その活動内容や意義を本学会大会にて発表してきています。(『セラピストのための体験合宿の試みーテキストマイニングを用いたインタビュー分析―』 角・越川・中井 など)
定員 20名
WS参加にあたっての注意事項
服装:
からだを動かしますので、動きやすいラフな服装を用意してください。
持参してほしいもの:
大き目のタオル・バスタオル・水分の持参をお願いします。
WS 5
セラピスト・フォーカシング
吉良 安之 先生(九州大学名誉教授)
内容紹介
セラピストは臨床実践のなかでいろんな体験をしています。不安になったり、圧倒されそうになったり、窮屈になったり、しみじみと相手の気持ちが伝わってきたり、などです。いつも自分の「感じ」と共にいると言えるでしょう。フォーカシングはからだの感覚を通じて自分の「感じ」と素直にやりとりする方法です。このワークショップでは、フォーカシングの感じ方を経験してもらいながら、セラピストとしての体験をゆっくり振り返って確かめます。セラピストが心の余裕を取り戻す機会にもなればと思います。(今のところ)以下を行うことを考えています。
- フォーカシングの感じ方やセラピスト・フォーカシングの方法を紹介する。
- 参加者各自が臨床実践でどんなことを感じているか振り返ってもらう。
- 希望者を募ってセラピスト・フォーカシングの個人セッションを行う。
- 参加者同士でペアになり、セラピスト・フォーカシングを行ってもらう(オブザーバーも可)。
c.の個人セッションは、セラピーを行うなかで扱いにくい感じや整理しにくい感じなどを抱えているセラピストと行うことを考えています。自分の感じと向き合ってみたいと思う人を募ります。
講師紹介
吉良 安之
九州大学名誉教授 福岡女学院大学客員教授
臨床心理士 公認心理師 The International Focusing Institute認定コーディネーター
九州大学大学院教育学研究科博士後期課程満期退学。琉球大学医学部精神神経科に勤務後、九州大学教養部に着任し、以後学生相談に長く携わる。現在は九州大学学生相談室や福岡女学院大学に勤務。博士(教育心理学)。2017年 日本学生相談学会学会賞受賞。
フォーカシングを土台にしたカウンセリングを行うとともに、セラピスト・フォーカシングを開発し実践しています。
主要著書
『主体感覚とその賦活化』九州大学出版会(2002)
『フォーカシングの原点と臨床的展開』共著(諸富祥彦編著)岩崎学術出版社(2009)
『セラピスト・フォーカシング』岩崎学術出版社(2010)
『カウンセリング実践の土台づくり』岩崎学術出版社(2015)
定員 30名程度
WS参加にあたっての注意事項
臨床心理学を学ぶ大学院生以上
WS 6
心理臨床におけるアートやイメージの活用
松下 智子 先生(九州大学キャンパスライフ・健康支援センター)
内容紹介
自身の感情や身体感覚に気づくために、アートやイメージを扱っていくことはとても有意義であり、アートを用いるグループ活動では参加者同士の相互作用に感動することも多くあります。
ワークショップでは、気軽にアートやイメージを活用するための工夫や留意点等について、簡単なワークを行いながら、お話ができればと思っています。
講師紹介
松下 智子
九州大学キャンパスライフ・健康支援センター・准教授/学生相談室カウンセラー 臨床心理士・公認心理師・大学カウンセラー。九州大学にて、壺イメージ療法やブリーフセラピー、増井武士先生の「こころの整理図」などの実践を学んだ後、それらを病院臨床や教育臨床場面で活用しました。その後、九州大学病院心療内科にて摂食障害や慢性痛などの心身症への臨床において、アートセラピーやプレイセラピーを心理士として担当し、失感情症や失体感症への臨床や研究を行ってきました。その後、現在の所属である学生相談の分野でも、日々の臨床の中で言語面接にアートやイメージ(描画や比喩、数値化)を援用したり、グループ活動でアート(描画や粘土、川柳、アートクッキング)を活用する実践を行っています。
主要著書
松下智子,舩津文香,小田真二ほか. 大学生向けの e ラーニング教材を用いた心理・健康教育の試みとその効果.CAMPUS HEALTH,61(2),134-143,2024.
松下智子,荒木登茂子.「アートクッキング」を用いたグループ活動の実践 第1報.日本心療内科学会誌,27 ( 2 ) ,57 – 65,2023.
日本心療内科学会誌,27 ( 2 ) ,57 – 65,2023.
学生相談の広がりと深まり.第2部第1章 大学生のストレス対処能力,心身の健康に焦点を当てた eラーニング教材開発(松下智子).吉良安之・高松里編著,花書院 2021.2.
Tomoko Matsushita, Takakazu Oka. A large-scale survey of adverse events experienced in yoga classes.BioPsychoSocial Medicine, 2015.
松下智子,細井昌子,中山智恵ほか.非言語的なアプローチが有用であった疼痛性障害の一例.心身医学 54 (2), 184-185, 2014.
松下智子, 有村達之, 岡孝和.失体感症に関する研究の動向と今後の課題.心身医学51(5),376-383, 2011.
松下智子.心的外傷事例におけるネガティブな感情の取り扱いについて.心理臨床学研究,28 ( 6 ) ,2011.
定員 20名程度
WS参加にあたっての注意事項
大学院生以上。服装は自由。
WS 7
一から学ぶジェンドリン哲学:心理臨床と哲学の接点
三村 尚彦 先生(関西大学文学部教授)
内容紹介
フォーカシング、フォーカシング志向心理療法を提唱したユージン・ジェンドリンEugene Gendlin(1926-2017)が、もともと哲学研究者であったことはよく知られている。そしてその哲学的思想が、フォーカシングという実践に理論的基盤を与えていることも明らかであろう。
しかし、実際にジェンドリン独自の哲学がどのような主張を展開し、いかなる特徴をもったものなのか、またそれがどのようにフォーカシング理論と関わっているのかについては、広く理解が浸透しているとは言いがたい。より端的には、ジェンドリン哲学の研究はそれほど進んでいないし、一部は誤解されているとも思われる。
本ワークショップは、ジェンドリンの体験過程理論Theory of Experiencing、さらに「暗含の哲学」Philosophy of the implicitの内容を、一から丁寧に解説し、予備知識のない方に、ジェンドリン哲学の概要理解を提供することを試みる。特に、フェルトセンスを、言葉(だけでなく広い意味でのシンボル)で表現していくことで何が起こるのか、「フェルトセンスは身体的である」というフレーズで、われわれは何を理解すべきなのか、また、フェルトセンスと言葉の相互作用、交差crossingといった用語の意味などを、ジェンドリン哲学に照らして解説していく。
さらに、受講者の皆さんの日頃の臨床実践とジェンドリン哲学がどう関わるのか、その接点について議論を通じて、ともに考察していきたい。
講師紹介
三村 尚彦
関西大学文学部教授。専門は現代哲学、フッサール現象学。2008年ごろからジェンドリンの体験過程理論を研究しはじめ、その後、2013年から現代美術家荒川修作+マドリン・ギンズの研究にも取り組んでいる。
主要著書
三村尚彦『体験を問い続ける哲学 第1巻初期ジェンドリン哲学と体験過程理論』ratik 2015年
三村尚彦、門林岳史編著『22世紀の荒川修作+マドリン・ギンズ——天命反転する経験と身体』フィルムアート社、2019年
Naohiko MIMURA & Takeshi Kadobayashi, Art and Philosophy in the 22nd Century: After Arakawa and Madeline Gins, ratik 2023
定員 50名程度
WS 8
オープンダイアローグの臨床哲学を生かした事例検討
大石 英史 先生(宇部フロンティア大学)
内容紹介
オープンダイアローグはフィンランドの地域精神医療の実践の中から開発されたグループ臨床支援の手法であり、診断や治療よりも個人の理解に価値を置いている点でパーソンセンタード・アプローチと多くの共通点を持っています。ワークショップでは、オープンダイアローグの臨床哲学について概観した後に、事例検討を媒介とする支援者支援グループの場を創り出したいと考えています。
このグループには大きく2つの目的があります。ひとつは事例提供者をサポートすることです。メンバーたちは事例提供者がどのような動機で事例を出そうと思ったのか、そこから何を学ぼうとしているのかに注意を払いながら事例概要を共有します。まずは事例を理解するために提供者の語りに耳を傾け、事実関係について聞きたいことがあれば質問します。もうひとつの目的は、この場にこのメンバーが集まったことの意味を最大限に生かすことです。そこには対面でしか起こらない交流の意味が含まれています。
ファシリテーターは、事例提供者が提示する事例を通して、ひとりひとりのメンバーが何を学ぶのか、このメンバーでなければ学べないことは何なのかを大切にしながら共に居るようにします。事例提供者がクライエントとの関わりの中で体験したことを語り直すことで、事例の中で起こっていることを理解できるように支えていくとともに全参加者がそれぞれの学びに向かいやすくするために、メンバーひとりひとりの存在を生かすことに留意します。また、セッションの途中で、事例提供者の自己理解とメンバー同士の相互理解を深めるために、リフレクティングという手法を用います。
セッション全体を通して、メンバー同士が対話を重ね、事例と事例提供者を理解するとともにメンバーの相互理解も深まっていきますが、このプロセスを推し進めていく原動力は人間への純粋な関心です。事例を聞いているときに自分が過去に担当した事例やエピソードが思い浮かぶこともありますが、そのときは積極的に自己開示してもらうことで、ひとつの事例をより普遍的な広がりを持って検討していくことになります。
なお、具体的なセッティングや手順の詳細については当日お話しします。当日は、浅枝庸さん(三州脇田丘病院)に補助スタッフとしてご協力いただきます。
講師紹介
大石 英史
宇部フロンティア大学心理学部教授。九州大学教育学部卒業、九州大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。山口大学教育学部教授、鹿児島大学大学院臨床心理学研究科教授を経て、現在は宇部フロンティア大学心理学部教授。臨床心理士・公認心理師、学術博士。専門は人間性心理学、コミュニティ臨床支援学。
主要著書
大塚類・遠藤野ゆり編著(2014)エピソード教育臨床:生きづらさを描く質的研究. 創元社.
田邊敏明編著(2014)明日から教壇に立つ人のための教育心理・教育相談. 北大路書房.
小柳 晴生・大石 英史(2024)脳の落とし穴、愛着の忘れもの: 発達障害の謎にせまる. 木立の文庫.
定員 20名(事前に事例提供者2名を募ります)
WS 9
ゲシュタルト療法のエッセンスとその臨床応用
中尾 文彦 先生(やまと精神医療センター)
内容紹介
ゲシュタルト療法と聞くと、「身体感覚や感情を激しく喚起させるので日本人には向かない」「エンプティ・チェアをする人たち」などの印象をお持ちの方もいらっしゃると思います。しかしそれは私に言わせれば「パーソン・センタード・アプローチって相手の言葉をオウム返しすれば良いんでしょ」との暴論に等しい、誤解を含む極端なイメージです。
ではゲシュタルト療法とは何でしょうか?ゲシュタルト療法では【今ここでの私とあなたの関係】を大切にしながら、セラピストとクライエントが一緒に、自分自身、相手、そして自分がいる環境に、丁寧に気づいていくことを何よりも大切にします。そしてその気づいたことをもとに対話しながら、自分らしく豊かに生きることを目指すアプローチです。
そのようなことを体験的に学んでいただくため今回のワークショップでは、①ゲシュタルト療法のエッセンスについての簡単な説明、②そのエッセンスを各人各様に体験してみるための簡単なグループワークやペアワーク、③そのようなエッセンスが日々の心理療法にどのように役立つ可能性があるか?参加者の皆さんがそれぞれ創意工夫される際の一例として、講師自身の臨床事例の紹介、の3つを行います。
デモセッションもエンプティ・チェアもしません。堅苦しい挨拶も正装も必要ありませんので、自分らしい、くつろげる格好でご参加下さい。
講師紹介
中尾 文彦
やまと精神医療センター主任心理療法士。現在所属する精神科病院に長年勤務してきました。そこでの私の主な業務は、重篤な精神疾患を抱え、自傷他害のリスクが高い状態にある人への心理的支援です。
そのような臨床の中でゲシュタルト療法を実践する傍ら、10年ほど前から週末にゲシュタルト療法の効果を研究する活動を細々と続け、そこで得た知見をもとに3つの論文を執筆しました。また8年前から日本ゲシュタルト療法学会の認定トレーナーとして後進の育成のためにセラピーを提供してきました。
主要著書
ゲシュタルト療法における逆転移の活用について.ゲシュタルト療法研究,(6),35-44,2016.
ゲシュタルト療法における診断的理解の必要性について.ゲシュタルト療法研究,(9),3-12,2019.
ゲシュタルト療法においてクライエントが体験すること-新たなプロセスモデルの提案-.ゲシュタルト療法研究,(12),49-59,2022.
その他、精神分析に関する論文を1本、催眠療法に関する論文を1本、それぞれ執筆してきました。人間性心理学と精神分析の接点、人間性心理学と催眠療法の接点などにも関心を持っています。
定員 18名
WS参加にあたっての注意事項
守秘義務を守ることができる専門家、あるいはそれを目指す大学院生
WS 10
私がプロデュースしているフォーカシングの特色
〜フォーカシングαや各種iFocusing 〜
池見 陽 先生
(関西大学名誉教授*、池見カウンセリング研究所(Akira Ikemi’s iFocusing Institute))
内容紹介
「フォーカシング」と「私」を区別して語るのは難しい。「私」が「フォーカシング」に惹かれて、40年以上にもわたってそれと関わってきているのだから、それはまさに「私」あるいは「私の人生」に含まれている。まして、フォーカシングを世に生み出したのは恩師ジェンドリン先生だったという事実もある。ジェンドリン先生も私もバイリンガルだから、ある言語から別の言語へとコトバが訳されるとニュアンスが変わってしまうことを知っている。コトバに含意されたフェルトミーニング(感じられた意味)が辞書に記されている訳語よりも繊細に香ることを知っている。そこに注意を向けると感じられている意味感覚がフェルトシフトして意味が新たに言い表されてくる。フォーカシング技法に先立ってジェンドリン先生はこれを「フォーカシングの4つの位相」と名付けた。「4つの位相」も「技法としてのフォーカシング」もどちらも「フォーカシング」と呼ばれるから混乱する。そのため、私は意識現象としてのフォーカシングを「フォーカシングα」と呼ぶことにした。
新しい意味が言い表されることは即ち未形成の体験がコトバになるということだ。体験が表現になり意味(理解)が立ち現れる、体験・表現・理解の循環をジェンドリン先生は「体験過程」と呼んだ。当日は体験過程を中心に据えた池見のフォーカシングのワークを紹介していく。漢字フォーカシング、アニクロ、シカゴ・スタイル・リスニングを予定している。池見がプロデュースした、こういったフォーカシングのワークをiFocusing と呼ぶ。当日はこれらをペア・ワークとして実践する。
最後に、西洋で考案されたフォーカシング技法(β)とのコントラストを鮮明にするエイジアン・フォーカシング・メソッヅ (Asian Focusing Methods) (iFocusing )のうち、当日は「観想法」をペアワークとして実施してみたい。
講師紹介
池見 陽
関西大学名誉教授*(本情報公開時点では理事会承認待ち) 池見カウンセリング研究所(Akira Ikemi’s iFocusing Institute)。産業医科大学、岡山大学、神戸女学院大学、関西大学で教育・研究に従事。英・豪の大学で博士論文審査官など。日本人間性心理学会、WAPCEPC (UK)、The International Focusing Institute (TIFI: USA) などで理事を歴任。現在TIFI内 「ジェンドリン研究センター」運営委員長。日本人間性心理学会 学会賞受賞(2020)、Journal of Humanistic Counseling (American Counseling Association) にて Living Luminary (存命の輝ける大家)に指名(2019)。 臨床心理士。
主要著書
『カウンセリング再発見:それはフェルトセンスから始まった』(創元社)『バンヤンの木の下で』[小説](木立の文庫)
『心のメッセージを聴く』(講談社現代新書)
ほか多数
定員 30名程度
WS参加にあたっての注意事項
大学院生以上。服装は自由。
WS 11
繊細な人のためのスピリチュアル・セルフケア
串崎 真志 先生(関西大学文学部)
内容紹介
繊細な人は、感覚過敏があったり、深く考えすぎたり、ひとりの時間を好むなど、独特な性質があります。また、相手の気分に染まりやすかったり、疲労が蓄積しやすかったり、大勢の集まりが苦手であったり、人間関係の距離感が難しかったりします。したがって、ふだんからセルフケアに取り組み、日常生活で心の平穏を維持することが大切です。精神科医のジュディス・オルロフは、セルフケアのポイントとして、他者との間に健全な境界を設定すること、直感を信頼すること、動物・植物・自然・芸術と触れ合うこと、瞑想することを挙げています。本ワークショップの午前中は、『感じやすいあなたのためのスピリチュアル・セルフケア――エンパスとして豊かに生きていく』『共感を使いこなす――敏感な自分、人間関係、世界を癒す実践的スキル』(いずれも金剛出版)の内容を紹介しながら、繊細な性格の特徴やセルフケアのポイントについて学びます。午後は、『共感の学校』『直感の学校』『好感の学校』(いずれも木立の文庫)の内容を加味して、人生と転生のミッション、波動と魂の成長、引き寄せの法則、直感と創造性の探究、多元的な世界と自己実現などについて考えていきましょう。そして、参加者の皆様の個性に合ったスピリチュアル・セルフケアを見つけていただければと思います。本を持参する必要はありません。
講師紹介
串崎 真志
関西大学文学部教授
主要著書
『感じやすいあなたのためのスピリチュアル・セルフケア――エンパスとして豊かに生きていく』(監修,金剛出版,2024)
『共感を使いこなす――敏感な自分、人間関係、世界を癒す実践的スキル』(監修,金剛出版,近刊)
『共感の学校』『直感の学校』『好感の学校』(いずれも単著,木立の文庫,2024)
定員 30名
WS 12
クロスカルチャー・エンカウンターグループ
三國 牧子 先生(九州産業大学)
Brian Rodgers 先生(オークランド大学)
内容紹介
ニュージーランド出身のBrain Rodgersと福岡出身の三國牧子がファシリテーターのクロスカルチャー・エンカウンターグループです。Brianは日本語を一言も話せないので、ジェスチャーやハートを使ったコミュニケーションで…もちろん、英語ができる人とできない人が助け合ってのグループ。異なる文化、異なる背景、異なる言語…その違いを感じ、一人一人の皆さんとの出会いを楽しみにしています。
講師紹介
三國 牧子
九州産業大学人間科学部臨床心理学科准教授。
専門はエンカウンターグループ、PCA。
年間で5回ほどのエンカウンターグループのファシリテーターをしています。異文化・多言語のグループのファシリテーターも行っており、言葉の違いのあるグループを楽しんでいます。今回もファシリテーターの1人が日本語が分からない人です。どのようなグループ展開になるかわかりませんが、楽しみたいと思います。
主要著書
「ロジャーズの中核三条件 共感的理解:カウンセリングの本質を考える1〜3」 創元社
Brian Rodgers
ニュージーランド・オークランド大学で教鞭をとっており、カウンセラー教育プログラムのプログラムディレクターを務めている。過去20年間にわたり、オークランド工科大学、オーストラリアのクイーンズランド大学、スコットランド・グラスゴーのストラスクライド大学など、さまざまな教育機関でカウンセラー教育に携わってきた。
興味関心は、パーソンセンタードおよび体験的カウンセリング、テクノロジーとカウンセリング/心理療法、カウンセラー教育や異文化間コミュニケーションなど多岐に渡る。
Brian先生にとって今回が初めての来日で、日本のみなさんに会うことをとても楽しみにしています。
主要著書
Can we be of help? Cultural considerations regarding personal growth, relationships, therapy, and life (2023)
こちらの論文を日本語訳で読むことができます。以下からダウンロードしてください。
定員 9名